つばさブログ

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午前2時フミキリに望遠鏡を担いでったのは今は昔、 午前4時SNSに「死にたい」と呟いた。-Hakubi/『追憶』ディスクレビュー


〈午前2時 フミキリに 望遠鏡を担いでった〉は、BUMP OF CHICKENの代表曲「天体観測」のワンフレーズである。この曲は午前2時、街が静かになった時間に出掛けることの背徳感と、好きな人と出掛けるも素直な気持ちを伝えられない、二つのドキドキが相まって人々を興奮させ続けている。


「天体観測」が発売されてもう間も無く20年。20年後の午前2時といえば、未だに一般的には夜分遅い時刻ではあるもののかなりの人が起きている。というよりも起きていることが分かるようになってしまった。
それはSNSの台頭による。午前2時だろうが午前4時だろうが、24時間、いつだってSNSには人がいる。
一方20年前の午前2時には、SNSがなければ、娯楽は一切なかった。この頃の家で誰もが楽しめる娯楽はテレビ、一択。そして、そのテレビは2時を過ぎれば放送が続々と終了していく。今となってみればネットが身近になり、YouTubeNetflix、みんながやってるLINEやTwitterと、午前4時でも娯楽はあるし、人と繋がれてしまう。


Hakubiが11月6日に「追憶」をリリースした。Hakubiは、片桐(vo./Gt.)、ヤスカワアル(Ba.)、マツイユウキ(Dr.)からなる京都出身のスリーピースバンドだ。

片桐はLyu:Lyuやそれでも世界が続くならといったバンドをルーツとし、社会での生きにくさや、日々の痛みを感じながらも社会に、自分に反抗していきたいと打ち出すロックを歌う。
音楽性はKANA-BOON以降の4つ打ち邦ロックを程よく汲み取りメロディアスではあるが、歌詞に注目がいくような工夫がされている。


新作『追憶』のリード曲「午前4時、SNS」はボーカル片桐自身の体験、体験というよりも午前4時に感じたことをそのまま歌ったと思える曲である。
自室で自分の気持ちを吐露するかのように弾き語りから始まり、感情が昂るにつれ楽器が増えていく。そして、夢を語った仲間の就職、音楽の神様とまで形容するアーティストへの失望、自分のために生きてきてはずなのに何が正しいのか分からない自分について歌う。
夢を追うということが認められるのは十代までで、二十歳を過ぎると夢よりも安定の方が正しくなってしまう。日本でメジャーデビューをすればインディーズで尖っていても社会の波に揉まれ丸くなることなんてよくある話だ。
でもそんなことを気にした所で世間やヒーローが変わらなければ、なりたい自分になる為に動くのは自分でしかないことも分かってはいても、何もやらないのに勝手に自分に期待をかけすぎてもがき苦しんでしまう。

そして、そんな思いを全てを語るのはカッコ悪いから、夜中に〈死にたい〉と一言SNSに呟いてしまうのだ。SNSで呟けば、バックグラウンドを話さずとも、誰かしらが気にかけてくれ、情けない承認欲求が満たされる。
しかし、そんな自分にクソったれっと歌うのだ。


午前2時に天体観測をするよりも、SNSで傷の舐め合いをしている方が気持ちよくなってしまった。
しかし、SNSがあったからこそ今作のような救いようのない自分を奮い立たせるロックが生まれた。
望遠鏡からSNSに変わったが、今も昔も〈見えないモノを見ようと〉して日々生きているのかもしれない。




『追憶』/Hakubi
1.午前4時、SNS
2.Dark.
3.17

Hakubi - 午前4時、SNS【MV】 - YouTube


https://www.hakubikyoto.com/